信託の対象となる財産は、金銭に限らず不動産も対象とすることができます。
ただし、不動産を信託した場合、登記をしなければ、信託契約の当事者ではない第三者に対して、この不動産が信託された財産であることを主張できません。また、受託者の固有の財産と区別し、信託の内容に従った運用がされるように登記によって第三者に信託財産であることを知らせる必要があります。
信託した不動産の登記簿には、どのような記載がされているのでしょうか。
信託した不動産の登記簿の記載内容
下記は、土地を信託した場合の登記記録の記載例です。
所有権に関する甲区には、(1)信託によって不動産の所有権が受託者に移転した登記、(2)信託の登記がされます。
受託者は、登記上不動産の所有権を取得していますので、この不動産の処分や管理について、登記上の所有者である受託者が単独で行うことができます。
ただし、信託の登記も同時にされているため、登記上所有権を有していても、受託者の固有の財産とは区別されます。例えば、受託者が死亡した場合に、受託者の相続人が相続できる財産とはならず、信託財産として存続します。
また、委託者、受託者、受益者、信託条項を明らかにした信託目録が作成され、登記記録の一部となります。
- 委託者・・・信託をした者です。従来の所有者が記載されます。
- 受託者・・・信託をされた者です。信託財産の管理又は処分等をすべき義務を負う者です。
- 受益者・・・受益権を有する者です。
※委託者と受益者が同一であれば、登記上受託者に所有権が移転しても、実質上不動産から生じる利益を受ける者は委託者のまま変わりませんので、受託者に対して贈与税や不動産取得税は課税されません。 - 信託条項・・・信託の目的、信託財産の管理・運用・処分に関する事項、信託の終了に関する事項等信託契約の内容が登記されます。
これら登記された信託に関する事項に変更があった場合には、変更登記手続きを行う必要があります。
