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終活とは?いつから始める?
終活とは?
終活とはもともとは「就活」(就職活動)のもじりで、人生の終末に備える活動を意味します。最近ではエンディングノートの流行もあり、ごく普通の言葉になりました。
終活の意義や目的に関しては、いろいろ言われていますが、基本的には
- 最後まで悔いなく生きる
- 残された家族に迷惑を掛けない
- 葬儀などに自分の想いを反映させる
ことが大きな目的と言えるでしょう。
とんちで有名な一休さん(一休宗純)は、室町時代のお坊さんですが、竹竿に本物の髑髏(どくろ:人間の頭蓋骨)を掛け、正月の京都の町の家々を「ご用心ご用心」と言いながら回ったそうです。もちろん、嫌がらせが目的ではありません。「人はいつ死ぬかわからない、正月だからと浮かれていてはいけない」というのです。一休さんの時代には「終活」という言葉はありませんが、この振る舞いこそ「終活」の原点となる考え方ではないでしょうか。
※『一休咄』巻ノ二より。なお、『一休咄』は江戸時代に刊行されたもので、史実かどうかはわかりません。
終活はいつから
終活と言うと文字通り人生の終わりが見えてきた高齢者が考えること、というイメージをもたれがちです。
しかし、一休さんの上の逸話にもあるように、終活は、人生の終わりが見えてきた時期によるというよりは、むしろ、人生の終わりを意識する前から始めるべきです。
実際、人間はいつ死ぬかわかりません。20代で亡くなる人もいれば100歳を超えて元気な人もいます。そういう意味では、終活は年齢だけの問題ではありません。50代でも40代でも、あるいは30代でも、終活を意識した方が良いと言えるでしょう。
さて、終活と言っても、ここでは主として法律的な観点での終活を考えたいと思います。その大きなポイントは2つ。財産目録と遺言です。
終活の始め方1 ~ 財産目録をつくる

財産目録とは?
人は死ねば肉体的には骨が残るだけです。しかし、現実の社会生活では、法律的な観点では、死ぬと相続が発生します。そして、一般的に相続で重要とされるのは財産の引き継ぎ(承継)についてです。この点で、終活を始めるに当たっては、まず、財産目録をつくることから始めましょう。
財産目録の意味・内容
財産目録と言うと難しそうですが、要するに、お金として価値のあるものをどのような形でどれだけ持っているかのリストです。
具体的には
- 預貯金
- 株式・債権
- 不動産
- 保険
- 高額の動産
- 年金
- 会員権
- クレジットカード
- 貸付金
- 借金
などがあります。
具体的な内容は後述しますが、これらを明らかにしておくことは、
- 相続時に遺族が相続するか否かを的確に判断する(例えば、借金が多いなら相続放棄もあり得ます)
- 遺族が相続財産を探す手間(これは結構大変です)を省く
- 相続税の計算や各種手続きを円滑に進める
ために重要です。後述の遺言を書く上でも必須になります。
財産目録の項目
預貯金
銀行・支店名、口座番号、通帳の所在などが重要です。また定期預金の証書の保管場所なども残しておくべきです。残高は通常、変動するものですか、定期的に概算額を記載しておくと便利です。
株式・債権
銘柄名と株数、証券会社・支店名などが重要です。
最近は個人で株や外貨取引などをしている場合もあります。現物取引なら良いのですが、FXなどでは放置すると思わぬ損害を発生しかねません。死亡時に遺族が手仕舞い処理できるだけの情報が必要です。
不動産
場所と面積、用途などが重要です。不動産登記簿や権利証、固定資産税の納税通知書なども残しておきましょう。
保険
生命保険と損害保険があります。なお、生命保険のうち死亡保険金は、受取人=本人の場合は相続財産になりますが、本人以外の受取人を指定している場合は、相続財産ではなくなります。したがって、受取人が誰かも重要です。保険証書の所在や証書番号も記録しておくと便利です。
高額の動産
宝石、貴金属、骨董品、美術品、車などがあります。なお、乗用車は遺族が引き継がない場合、廃車のためにコストがかかる場合もあります。
年金
公的年金と個人年金があります。年金番号や年金の証書を残しておきましょう。
会員権
ある程度価値が見込まれるもの(ゴルフ会員権、施設利用会員権など)は記録しておくと便利です。
クレジットカード
不正利用されないように死亡時に処理できるようにしておきましょう。種類、クレジットカード会社、クレジットカード番号、連絡先の情報が必要です。
貸付金
第三者にお金を貸し付けている場合です。誰にいつ、いくら貸したのかの情報や金銭消費貸借契約書などの証拠書類も必要です。
借金
ローンや借金などです。相続後にわかると遺族に大変な迷惑が掛かるので記録しておきましょう。連帯保証など保証人になっているものも書いておきましょう。
終活の始め方2 ~ 遺言書を書く

遺言書などと言うと縁起でもないと思われがちですが、一休さんが言ったように、人生いつ何が起こるかわかりません。
なお、遺言書と遺書は違います。遺言書は(婚外子の認知などもありますが)基本的に財産の分配を記載したものです。財産主体なので財産目録ができていれば比較的簡単に作成できます。
但し、遺言書には一定の要式があります。例えば、書籍形式のエンディングノートに記載するとかパソコンで作成して秘密フォルダーに保存するのでは有効な遺言にはなりません。
具体的には遺言についてのコラムを参照していただくのがよいと思いますが、2018年の民法改正で、自筆証書遺言でも財産目録部分はパソコンでも作成できるようになりました。その意味でも終活を始めるにはまず財産目録で財産の棚卸しをするのがよいと思います。
終活の始め方3 ~ エンディングノートやSNSアカウント
エンディングノート
エンディングノートは終活に関して家族に残す指示や希望などを書き記したノートです。書き込み式のものがいくつも本屋さんなどで売られています。その点で取っ掛かりやすいのですが、一般的には法律的な遺言の代わりになるものではありません。ただ、それなりに意味はあります。
例えば、エンディングノートでは葬儀に関する希望を書いておくことがよくあります。
- 散骨して欲しいといった埋葬方法に関する希望
- 葬式では誰それの音楽を流して欲しいといった葬儀の段取りや雰囲気に関する希望
- 会葬案内を出して欲しい人のリスト
などです。
遺言書については法律的な効果をもたらす内容が限定されていますし、死後、すぐに遺族の目に触れるとは限りません。そのため、葬儀についての要望事項を遺言書に書くのは妥当ではなく、書いても希望通りになるとは限りません。これに対し、エンディングノートをつくって家族の目に触れやすい場所に書いておけば、葬儀前に見てもらって葬儀のやり方などに反映してもらうことができます。
ただ、繰り返しになりますが、通常のエンディングノートは遺言書の代わりにはなりません。また、家族の目に触れるところに財産情報などを書いておくのがよいのかという点もあります。この点では、葬儀などに関する要望を書いたエンディングノートとは別に、専門家に相談して財産目録や遺言書などを作成しておくのがよいでしょう。
SNSアカウントなど
最近では、SNSなどの死後の処理をどうするかも問題です。本人は亡くなっているのに死後も本人のページに第三者の書き込みがされているのをよく見かけます。悪用されなければそれも構いませんが、なりすましが現れて犯罪に利用されないように、SNSなどのアカウントのクローズ処理も考えておくのがよいでしょう。
まとめ
財産目録にせよ遺言にせよ、生前は個人情報なので家族も含め第三者にはあまり知らせたくない情報です。
一方で、本人が亡くなった時は急ぎ必要な情報でもあります。
その点では、信頼できる第三者、できれば専門家に託しておくのがいちばん安全です。
「自分が亡くなった時はどこそこの誰々先生に連絡してくれ」と家族や知人に言っておくだけば、生前は秘密が守られ、かつ、死後の処理が円滑に進むからです。
財産目録も遺言も専門家の指導を受けて作成するのが望ましいですし、SNSなどのクローズ処理などもアカウントとパスワードなどを秘匿状態で託すことが可能です。
そうした専門家としては司法書士が適任です。
普段からかかりつけの司法書士や司法書士事務所をつくっておくのが終活のベストな始め方と言えるかもしれません。