相続登記は義務?

ご逝去後の手続き

「登記ってしなきゃいけないのですか?」

 

相続のご面談の場で、受けることのある質問のひとつです。

登記は、税金のようにメジャーではありませんし、人生で何度もお目にかかるものでもありません。何のために存在しているのか知らないし考えたこともない、というのが一般的な感覚だと思います。しかも登記申請時には登録免許税という税金を納める必要があり、専門家に依頼すれば報酬も支払わなければなりません。

では、相続税に納税義務があるように相続登記にも登記申請義務があるのでしょうか。今回はそんな観点から、お話したいと思います。

 

 

相続登記は義務か?

 

たとえば、こんな事例があったとします。

 

 事例①-1

父が死亡しました。

母はすでに他界していた為、相続人は子であるAとBの2名です。(この場合、法定相続分はA:1/2、B:1/2です)

 

ところがBは家族と折り合いが悪く、長年実家を訪れることもありませんでした。

AもBと疎遠になっていましたが、父の相続について話し合う必要からBに連絡を取り、父の遺産の分け方につき協議を行いました。その結果、不動産の全部をAが取得することになりました。

 

Aは、遺産分割協議の結果を踏まえ、父名義の不動産につき、所有者を「A」に変更する登記申請をする義務があるでしょうか。

 

結論を申し上げますと、義務はありません。

相続登記をしなかったからといってペナルティを課せられることもありません。

 

 

では、なぜ登記をする意味があるのか。

それは、相続登記の持つ効力に関係しています。

 

 

相続登記をする意味

 

Aは遺産分割協議がまとまったことにほっとして、相続登記をしていませんでした。ところがその後に、こんな思わぬ展開があったようです。

 

 

 事例①-2

Bは、遺産分割協議に反して、「A:1/2、B:1/2」の割合で相続登記を入れた上で、自らの持分をXに売却してしまいました。買い受けたXは、1/2の持分を取得した旨の登記をしました。

 

果たしてAはXに対して「この不動産は全部自分が相続したものだ」と主張し、持分を取り戻すことが出来るでしょうか。

 

答えは、NOです。

 

Xから取り戻すことは出来ません。これにより不動産は「A:1/2 X:1/2」の共有となります。

 

 

 “相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分については、登記を備えなければ、第三者に権利主張することができない。(民法第899条の2)

 

 

法定相続分とは、民法が(勝手に)定めたものであって、相続人は必ずしもこれに縛られる必要はありません。遺産分割協議によって、その割合を自由に変更することが可能です。

ところが、第三者(今回の事例でいうX)からは、相続人間でどのような遺産分割協議が行われたのかを知る術がありません。

 

そこで民法は、一定程度この第三者を保護する必要もあることから、「相続登記をしなかったAには、法定相続分の取得だけを保障」し、「それを超える部分についてはXの権利を保障する」こととしました。Aは相続登記さえしていれば、Xに1/2の持分を取得されることはなかった、ということになります。相続登記をする意味は、まさにここにあると言えます。

 

 

 

まとめ

このように、遺産分割協議を済ませただけで相続登記をしないでおくと、思わぬところで権利を失うおそれがあります。遺言に「不動産はAに相続させる」と書かれていた場合も同様です。自らの権利を保全するために、相続登記もお忘れなく。